パリ発 記事|Nouvelles de Paris
パリ在住のジャーナリストが当シャンソニエの記事を書いてくださいました。
歌手でストラスブールコンセルバトワール教授 小林真理さんの手記もご覧下さい。
アレクサンドル記 銀座の真ん中のパリのうぐいす
雑踏と様々なのネオンに色彩られたブロックリン通りのような銀座、すばらしかった京都滞在の後、私は真珠のような価値を持つ東京の一角、銀座を驚きにも似た気持ちで見とれていました。
歩き疲れた後、並木通りにたどりつきシャンソニエ・マダムREIの看板が私の目にとまります。エレベーターに乗り、7階で降り、私は趣味の良いサロンに入ります。
私が、フランス語で「こんにちは」と言うと、マダムREIが美しいなまりのないフランス語で微笑をたたえて応対してくださり、私は心地良いソファーに案内されました。
彼女に、「直ぐにお話をしたいのですが、レッスンをまず済ませますので」と言われて、ヤマハの白いピアノの前に座られました。
サロンには、日本人の紳士とマダムが座っておられました。
ピアノからアズナブールの名曲マンマが流れ、そのマダムはフランス語で歌い出しました。マダムREIは、時々止めては歌い方や発音を注意します。
35分後、その生徒さんは、マンマの曲をほとんど完璧に歌えるようになっていました。そこに待っていた、他の生徒さん達のフランス語でのシャンソンのレッスンも私は聞いていましたが、マダムREIのエネルギーに満ちたプロフェッショナルなレッスンのおかげで、生徒さん達はたちまち上手になってゆくのです。
マダムREIからいただいたコーヒーを飲みながら、タバコに火をつけ彼女の話を聞き出します。
「私は芸大の声楽科を出た後、ブリュックセルの国立音楽院で声楽の勉強を続けました。ヨーロッパ滞在中、ブリュックセルのキャバレーはもちろんのことパリのキャバレーも何度もおとずれて魅了され、今でもその気持ちは変わりません。
Y・モンタン、G・ベコー、J・ブレル、C・アズナブール…、彼らが活躍したパリ。
私のシャンソンとパリへの情熱は今だに私の中で燃え続けていて、私はこのすばらしさを日本人にも分かってもらいたいと思っています。また生徒さん達には、シャンソンを歌うためには、絶え間ない毎日の努力と練習が大切と言う事をわかってほしいのです。私は今ごらんになったようなレッスンをしたあと、毎晩ここでリサイタル形式で歌っています。
ピアノと時々はヴァイオリンも加わり、シャンソンの名曲はもちろんの事、私自身の作品(彼女は作曲家でもあるのですね!)も歌います。私の歌によって、全く文化の違う、フランスから遠い国の日本の方々が、少しでもフランスのシャンソンというものを理解し、好きになって下さったらと願うのです。
もしよろしければ 夜7時からの今日のコンサートにご招待します。」
このインタビューによって、私はますます彼女の歌をきくのを楽しみになり、夜7時にまたこのサロンに戻ってきました。
マダムREIは さきほどの 先生から キャバレーの歌手に変身していました。
優雅な身のこなし、繊細なニュアンスでもって、彼女はシャンソンのスタンダードと彼女自身の作品も次々に歌っていきます。彼女自身の作品は フランスのシャンソンの雰囲気をもちながら 日本のポピュラー曲とまざったオリジナルなものでした。
彼女の歌を聴きながら、同時に見ながら、私は自分の耳と目を疑います。
私は涙が知らないまに出てくるほど感動しています。
マダムREIのサロンの雰囲気は、もう無くなっているパリのキャバレー( 黒い猫、アラハンブラ、サン・ジェルマンやカルチエ・ラタンのカーヴ )のようです。
聴衆は 彼女に魅了され 拍手喝さいを送ります。私にとっては、今、目の前にしてる事は、信じがたい不可能に近い事なのに、マダムREIによって可能になるのです。
彼女の願いの種は蒔かれて すくすくと育っています。どうぞ マダムREI、あなたの夢を 育て続けてください。
あなたの情熱、そして企画、現実化する才能にブラボーを送ります。
来年までさようなら。
アレクサンデル・チャストキエヴィッチ2007年5月19日 パリにて、日本旅行から帰って。
小林真理訳
P.S.これは2007年4月の事です。
銀座のシャンソニエ・マダムREIに出演して
2007年の春、4月26日に 芸大時代からの友人の長坂玲さん( 私は昔のとおり 玲子ちゃんと呼ばさせていただきます。)のお店、シャンソニエ・マダムREIで、徳永さんの伴奏でフランスのオペラやオペレッタそして、クルト・ヴァイルの歌曲を歌わさせていただきました。
そんなに広くないサロンで、熱心に聴いていてくださるお客さまを前にして、とてもリラックスした雰囲気で歌えて 私はとっても幸せでした。
玲子ちゃんは自分も歌いながら、楽しくおしゃべりをいれて、そのソワレ( soirée )を上手に進行させてゆくのには 全くシャッポー( chapeau )でした。毎晩こうして歌って、ますます上手になっている玲子ちゃんに感謝と祝福の気持ちをこめて、5月だというのに肌寒い日のつずいているパリから、乾杯 ! ( A votre santé ! )
小林真理 パリにて 2007年5月